もっと美味しい時間
「なぁ、もうすぐ日も暮れる。ずっとここにいる訳にもいかないし、お前さえ良ければ俺の部屋に来ないか?」
「えっ!? 京介の部屋って……」
慶太郎さんと一緒のマンションだよね。それも隣のマンションには、綾乃さんもいる。
そう考えるだけで、落ち着かない。
それに慶太郎さんがどう思うか……。
いくら京介が慶太郎さんの親友だといっても、男の人には変わりないわけで……。二人っきりで過ごすのは、どうかと思うんだけどなぁ。
「変なこと考えてるだろ?」
おでこをピンっと弾かれる。
「慶太郎も了解済みだ。それとも、あいつのとこ行くか?」
ブルブルブルと顔を横に振る。
「それに、あんたなんかに手は出さないから心配するな」
何だとっ!?
手は出されたら困るけど、それはそれで悔しいというか何というか……。
ジロッと横目に京介を睨むと、何故だか温かい笑顔。
「何かしでかすんじゃないかと心配してあちこち探したけど、思ったより大丈夫みたいだな」
「えっ?」
「慶太郎と綾乃の……」
そうだった……。
私はどうも、極端に嫌なことは忘れようとしてしまう傾向があるみたい。
結局、逃げてるだけなんだよね、それって……。