もっと美味しい時間
広い道まで歩いて行く途中、京介が携帯で電話を掛けだした。
「あっ俺。彼女、無事だから。報告まで。えっ!? ちょっと待てよ」
そのまま携帯を渡される。
「慶太郎。代われって」
黙って首を振り、嫌だとアピールして携帯を返す。
「出たくないって。じゃあ、今晩は予定通りうちに泊めるから。……さぁ、それはどうかなぁ~」
私を見てニヤリと笑うと、携帯を切った。
なんか、嫌な予感が……。
「最後のあれ、何?」
「んっ? 気になる?」
言い方も怪しかったし、ただの笑い顔じゃなかった。
きっと何かを企んでるんだ。
「慶太郎さん、何て言ったの?」
「ヒ・ミ・ツ」
い、今、「ヒ・ミ・ツ」って言った? 言ったよね?
京介からそんな言葉が出てくるとは、超意外!
明日は嵐が来るかしら?
そんなバカなことを考えていると、京介が一台のタクシーを止めた。
「ほらっ、乗れ」
「う、うん。でも京介の車は?」
「会社、戻りたくないだろ?」
そっか。気を使わせてしまったみたいだ。
「ごめんなさい」
「いいから、早く乗れ」
背中を押されると、慌ててタクシーに乗り込む。