もっと美味しい時間  

「今日は何を焼こうかねぇ」

メニュー表を渡され中を開く。
うわぁ~。豚玉にイカ玉、ミックスに海鮮焼き。こっちのねぎ焼きも捨てがたい。ひとり真剣に悩んでいると、京介が勝手に注文し始めた。

「豚玉と海鮮。時間遅らせてねぎ焼き。あと、ごはんと春さん特製の豚汁。以上でお願いします」

「はいはい、ちょっと待っててね」

慣れた手つきで言われた注文を紙に書くと、ささっと部屋から出て行く。

「京介。何で勝手に注文するの?」

「あんた迷うと時間かかりそうだし」

「ぶぅーっ!!」

当たってるだけに、何も言えない。
それにしても……

「お好み焼きなのに、何でごはん食べるの?」

「はぁ!? こっちでは普通のことだ。と言う俺も出身は大阪じゃないから、最初は不思議だったけどな」

「ふ~ん」

炭水化物に炭水化物。
いくら食べるのが大好きな私でも、それはちょっと負の連鎖のような気が……。

なんて、そんな考えは無用の長物だったみたい。

「京介。お好み焼きにごはん、合うねぇ~。それに春さん特製の豚汁も最高!」

「そうだな」

私の食べっぷりを見て、苦笑する京介。

「うん? 何かおかしい?」

「いや……。一緒にいる時間が長くなると、慶太郎があんたに惚れた理由がよく分かってくると思ってさ」

「慶太郎……さん」

夕方の、あの路地での光景が、フラッシュバックしてしまう。






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