HELIOLITEー君と輝く音ー
そして、気づく。篤が何故ここに居るのかと。
いつでも来ていいと言ったが、篤がバンドを抜けてから放課後の音楽室に来るのは初めてだった。
「なんで、篤がここに居るんだよ」
篤の首に腕を回し、拓弥が言う。
少しでも動いたら首が締まりそうで危ない。
「んーそれは、宏紀に呼ばれたからね」
それを、流れる仕草で交わす篤が俺を見る。
上手い交わしを習得しているのは篤だけ。
「なるほどね…」
疑問を浮かべる拓弥を他所に、望は俺の考えが分かったらしい。
そして、いつの間にか輪から外れていたかなでの元へと寄って行った。
「彼は前のボーカルだったのよ」
「柳沢(ヤナギザワ)篤って言います。よろしくね?」
「あ、わ、私は、岡本かなで…です。よろしくお願いします…」
今だ、何が起きているのか分かっていない様子のかなで。
篤の様子を伺うように頭を下げる。