【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~
一つの事に気付くと、次々に色んな事が見えてくる。

母の実家である春日家は、一族結婚の古いしきたりを重んじる家系だ。

それに気付いたとき、僕は確信した。

たぶん父と母は、家の為に半ば強制的に結婚させられたのだろう。

幼い頃、いつも優しく抱きしめて添い寝をしてくれた母さんは、時々夢の中で、僕ではない男の子の名前を呼んだ。


――龍也…イイコね…


その子の名前を呼び僕を抱きしめる愛おしげな表情(かお)を見るたびに、幼い僕は母さんが遠くへ行ってしまう気がして怖くなった。

それは誰?

僕は廉だよ?

ねぇ、お母さん…

タツヤって…誰?

タツヤというのが誰か気になって、夢から覚めた母さんに何度も聞いた事があった。

だが、母さんは夢を見たことすら覚えていなかった。



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