【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~
いつもよりはしゃいでいる様に見えるけど、それは上辺だけだ。

明らかに今朝僕に向けられた笑みとは違う今の笑顔は、付き合う前に良く見た無理に作った笑顔だった。

彼女はいつも笑おうとする。

どんな辛いときも、どんなに哀しいときも…

だけど僕にはそれが作ったものだと解かるんだよ。

何があった?

僕には言えないこと?

ストレートに訊けば良いだけの事なのに、何故か言葉にすることが出来ない。

自分でも何故そんな些細な事も訊けないのかと不思議だったが、安田さんが戻ってきたときに、部屋の香りが変わった事でやっと理由がわかった。

香織でも安田さんでもない香水の香りが部屋に残っている…

ほんの微かな残り香だったが、それに気付いた僕は直感した。


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