【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~
きっとあたしは、その場に相応しくない、幸せな表情をしていたと思う。
轟音と共に迫り来る貨物列車の風圧に、よろめきそうになった時、強く腕を引かれ、誰かに抱きしめられた。
信じられなかった
廉君の温もりに包まれていることが…
きっとこれは夢。
あたし…きっと死んだんだ。
だから、神様が望みどおりの夢を見せてくれているんだ。
だって信じられない。
あたしは線路に落ちて…だから廉君があたしを抱きしめているはずが無いわよね。
きっと夢…。
夢なら…泣いても良いよね?
ずっと我慢していたんだもん。
神様が幸せな夢を見せてくれたのは、きっと彼の腕の中で泣きたいと願った、あたしの最後の望みを叶えてくれたのだと思う。