【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~
これから語られる真実に、よほどの秘密があるのだろうか。
念を押すように何度も『現実を受け入れるように』と、繰り返すおばあさんにコクリと頷いて答える香織。
身内だけのほうが話しやすいだろうと、僕の両親が席を外そうとすると、おばあさんは一緒に聞いて欲しいと同席を願った。
ふらつく彼女を支え、寄り添っておばあさんを見つめる。
秋山夫妻も緊張の面持ちで、成り行きを見守っていた。
母がすっかり冷めたコーヒーの代わりに、新しい紅茶を淹れ始めた。
柔らかな香りが部屋を満たすと、それまでの緊張が緩み、ほんの少しだけ空気が和んだ。
まだ震えの止まらない香織は、両手でカップを支えるようにして紅茶を口に運ぶ。
その危なげな仕草に不安を感じたが、彼女は気丈にも寄りかかるのを止め、姿勢を正して顔を上げた。
僕を見つめ薄く微笑むと、無言で気持ちを伝えてくる。
ちゃんと全てを受け入れるから、傍で支えていてね―…
黙って頷き、小さな手を握り締めた。
それを見ていたおばあさんは安心したように頷いた。
それからゆっくりと全員を見渡し、静かに語りだした。
香織の両親にすら告げられていなかった真実を―…