【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~
そこには、俊弥が姿を隠さなければならなかった理由と、香織の母に関する事が書かれてあった。
その余りにも痛ましい内容に六香は涙した。
そして、その内容を誰にも知られないよう胸に仕舞い込み、すぐに手紙を燃やしたのだった。
たが、3枚の便箋のうち、母への思いを節に綴った最後の一枚だけはどうしても火をつけることが出来なかった。
3枚目の便箋には、息子の無念の叫びが聞こえたからだ。
六香にはその手紙が遺書のように見えた。
息子はもう生きていないのかもしれない。
そう思ったら、この一枚だけはどうしても捨てることが出来なかった。
= = = =
お母さん、本当にゴメン。
娘を育てることも出来ずお母さんに託す親不孝を許してください。
今の俺に出来ることは、逃げることだけ。
香織の存在をどうか隠し続けてください。
俺の子だと誰にも悟られることのないよう、里子に出してください。
何の親孝行もできなくてごめん。
最後まで迷惑をかけてごめん。
息子など最初からいなかったと思って忘れてください。
どうか捜さないで欲しい。
さようなら
お母さんの幸せを心から祈っています。
俊弥
= = = =
ショールと共に本棚の裏に隠した息子の最後の手紙。
それが時を経て香織に真実を告げることになるとは
その時には思いもしなかった。