【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~
その年初めての雪が辺りを純白に染め上げる山道を、俺は必死に走っていた。
雪に包まれた別荘。
ドアを蹴破り室内に駆け込むと、リビングのドアの前で一旦躊躇する。
この先にあるのは何度も繰り返し夢に見るあの日の惨状。
…思い出したくない哀しい記憶。
…見たくない愛しい人の最後の姿。
それでも…
どんなに苦しくても…
彼女に逢いたい…
心を決めてドアを開けると、そこにはいつも夢に見る惨状があった。
愛する人の血に染まった姿。
傍らのテーブルの上にはか弱い声で泣く、産まれたばかりの小さな命。
そして手首に深い刃物の傷を負い、大量の血を流した彼女の腕の中には―…
既に呼吸をしていない、もう一人の赤ん坊がいた。