【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~
細い指が俺の顔に触れる。
頬を伝う涙に気付いたのか『泣かないで』と小さく呟いた。
あの事故さえなかったら…
もっと早く着くことができていたら…
何をどう後悔しても、もう遅い。
彼女の命の火は、もう尽きかけていた。
「俊弥…せめてこの子だけは…一族の手の届かないところで…幸せに…」
「……ああ、約束する。きっとこの子は護ってみせる。だからもう…喋るな」
「…しゅ…ん……私…あなたを愛して…幸せ…だっ……」
「俺もだよ。誰よりも愛してる。だから…俺を独りにしないでくれ。お願いだっ!逝く…な…っ…」
「愛しているわ…」
フワリと微笑んだ彼女の幸せそうな顔。
あんなに幸せな彼女を俺は見たことが無かった。
百合絵はようやく解放されたのだ。
一族の血という重い枷から―…。