【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~
どうして俺たちの娘は、普通の娘のような幸せを望めないのだろう。
百合絵の最後の願いが胸に刺さって苦しい。
― 一族の手の届かないところで幸せに―…
百合絵…俺はお前の最後の願いを叶えてやれるのだろうか?
こんな父親失格の男でも、二人の幸せを願う資格はあるだろうか?
なぁ?最後に幸せだったとお前は微笑んだけれど…
本当に幸せだったのか?
真っ白だった世界が徐々に闇に包まれる。
白銀の雪は消え、闇夜に浮かぶ月が哀しげな銀色で別荘までの道を淡く照らしていた。