【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~
彼女から離れてはいけない。
心がそう警笛を鳴らしていた。
明後日から始まる夏休みを父の別荘で過ごす僕は、暫くここへ帰ってくることは出来ない。
今朝のようなことが、僕のいないときに起こったら…
そう思ったら、今日まで迷って中々言い出せなかったことを、今すぐにでも実行しなくてはと思った。
「香織…明後日から夏休みだけど…
僕は父の別荘で仕事を手伝っているから…当分ここへは帰って来れない」
「そうだったね。お誕生日にも会えないんだよね。
…プレゼントは早いけど明日にでも渡そうかな?」
そう言うと、僕から視線を逸らし腕の中からスルリと抜け出し、少し先を歩き出す。
誤魔化したつもりでも、一瞬浮かんだ哀しげな表情を僕が見逃す筈はなかった。