【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~
「香織ちゃん廉と付き合ってて退屈しない?
昔から勉強ばっかりしててさあ。
俺が無理矢理誘って付き合わせないとキャッチボールもテニスもしてくれないんだよ?
まったく子供らしくないって言うか、可愛くないんだよね…」

「はいはい、可愛くなくて結構。
それでも一応付き合ってるだろ?」

「その言い方が可愛くないっての。
パパー遊んで~とか言ってみろよ」

「死んでもヤダ。どうせ僕はむさ苦しくて可愛くないですからね。
でも、滅多に学校に来ないくせに、どうしてクラスで浮いてるなんて分かるんだよ?」

「そりゃ、分かるさ。俺だって一応理事長だし?」

「答えになってないし…」

「だって、廉がなかなか香織ちゃんに会わせてくれないからさ、痺れ切らして…」

「痺れ切らして…って、まさか香織を見に学校に来たとか?」

「あはは、まあ、ね。遠目でだけど」

「――っ!この、ヘンタイ親父!ストーカーかよ?」

「ストーカーだなんて失礼な。
大体、廉がいつまで経っても香織ちゃんを連れて来ないからだ。お前が悪い」

「はあっ?父さんに見せるなんて勿体無いこと簡単にできるわけないだろ?」

「勿体無いって…減る訳じゃあるまいし」

「減る!」

お父さんに声を荒げてバッサリと言い捨てる廉君に驚いた。

ここへ来てからまだ半日も経たないのに、別荘での廉君はまるで別人みたいに思える瞬間がある。

そんな一面を見つけるたびに、ズキンと痛いほどに心拍数が跳ね上がった。


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