【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~
「ははは…。廉のヤツベタ惚れだなあ。
うーん、香織ちゃんは静かだね?あまり話さないほうなの?」

「いえ、理事長先生。そういう訳では…」

単に話をするタイミングが判らないだけなんです。

そう言えるはずも無く、曖昧に笑っていると、廉君が大きく溜息をついた。

どうやらあたしの呑みこんだ台詞を悟ったみたい。

「あー。理事長先生かあ…。
それ止めようね?ここは学校じゃないし」

「えと…じゃあ、廉君のお父さん…」

「廉君の~って付くんだ。
クスクス…香織ちゃんみたいな可愛い娘なら、お父さんでもパパでも大歓迎。
なんならお兄さんでも克己君でもいいよ♪」

ニッコリと笑う理事長先生に、本気か冗談か解らず、笑って言葉を捜していると、廉君がズバリと突っ込んだ。

「父さん、年を考えろよ。
兄さんって…言って良いことと悪いことがあるだろうが?
見てみろよ。香織が引きつってるだろ?」

「いいじゃないか。呼び方は香織ちゃんが好きなように自分で決めればいいんだから。
俺は選択肢を広げてあげただけだよ。…ねぇ?」

パチンと鮮やかなウィンクを投げて笑う、廉君とそっくりな顔に、頬が熱くなるのを感じた。


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