【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~
「廉がやる気を出したのは香織ちゃんのおかげなんだよ。
君には本当に感謝しているんだ。
どうにもやる気の無いぐうたら息子をこんな立派な跡継ぎにしてくれたんだからね」

「あたしのおかげだなんて、違います。
それは廉君が毎晩遅くまで努力しているからで、あたしは何もしていません。
あたし、廉君って凄いなって、いつも尊敬しているんです」

「尊敬してる?廉の事を?
……へぇ~。良かったなあ、廉。
頑張った甲斐あって少しは香織ちゃんに相応しい男になれたんじゃないか?」

「…っさいよ。父さん。黙って食べたら?
香織が困ってるじゃないか。
ったく、久しぶりに家で食事をしたと思ったら、ずーっと喋りっぱなしでさ。
せっかく母さんが腕によりをかけて沢山作ってくれんだから、ちゃんと食べなよ。冷めるだろ?」

「はいはい。分かってるよ。
ねぇ、香織ちゃん。こんなボンクラ息子だけど、これからもよろしく頼むね?
君に捨てられたら、きっとこいつボロ雑巾みたいになっちゃうからさ、見捨てないでやってくれるかい?」

「やだ、見捨てるなんて…そんなこと…」

「もーっ!うるさいよ、父さん。
香織が困っているって言ってるだろ?そんな話、もうやめろよ」


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