【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~
ダイニングから香織を半ば強制的に連れ出し、勢いで部屋へ戻ってきたけれど、正直なところ、僕は戸惑っていた。

おしゃべりな父が余計なことをペラペラと喋るから、ホテルがオープンするまでは知られたく無いと思っていた僕の本心を、香織に知られてしまったからだ。

戸惑いはあったが、今更前言撤回という訳にもいかない。

だって、父に挑発されたとはいえ、どう考えても僕の取った行動は、全てを肯定していた。

僕がここまで成長できたのは確かに彼女のおかげだ。

だが、香織はどう思っただろう。

僕の気持ちや立場を重いと感じはしなかっただろうか?

学校での僕と、あまりに違う今日の行動に不快感を感じたりはしなかっただろうか?

僕を…嫌になったりしなかっただろうか

頭の中では、そんな考えがフルスピードで、駆け巡っている。

だけど、表向きにはいつもと変わりない笑顔で、持ってきたデザートを香織に勧めていた。


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