【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~
そのとき、壁掛け時計が10時を告げる音楽が鳴り、同時に香織があくびをした。

「クスクス…。もう眠い?今日は疲れただろう?」

「うん。緊張しているとは思っていなかったけど、やっぱり廉君と二人きりだとホッとする。急に疲れが出てきたみたい」

考えてみたら、香織にとって、今日は大変な一日だっただろう。

初めての土地、初めての家に来て、おまけに僕の両親に質問攻めされ、気を張っていたに違いない。

部屋にある僕専用のシャワーブースでシャワーを浴びる事を勧めると、香織は素直にそれに従った。

その素直すぎる様子にも、全く僕を意識している気配は感じられない。

はぁ…。警戒されても困るんだけど、やっぱりもう少し男として意識してほしいなあ?

程なくして、リビングまで届いた水音に、家族と共有する母屋の風呂を勧めなかったことを心底後悔した。


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