【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~
彼女が眠っているのは、昨日譲った山側の寝室ではなく、紛れも無く庭に面した僕の寝室だった。

まさか無意識に彼女に夜這いを?

一瞬自分を疑ったが、見たところ無意識に手を出した様子は無い。

ほっと胸を撫で下ろし、まだ深い眠りの中にいる彼女を起こさないように、抱きしめていた腕を静かに抜き、そっとベッドから降りる。

香織は一瞬だけ何かを探すように身動きすると、僕の枕をギュッと抱きしめて再び眠りに落ちた。

あまりに可愛らしい仕草に、もう一度ベッドに戻りたくなったが、そんなことしたら自制が利かなくなりそうで、音を立てぬよう寝室から抜けだすと、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、一気に飲み干した。


< 96 / 380 >

この作品をシェア

pagetop