噂の三兄弟と遠い約束【Berry's Cafe限定】

赤く腫れた瞼と、ウサギのように赤い目。

だけど、もう涙は出なかった。


どんなに泣いても、今の状況が良くなることはない。

どこにも行けず、ただ待つだけ。


そう。氷野彰次が来るのを・・・。


愛してもいない男と、結婚するくらいなら

いっそ死んでしまおうか―――――――


そんなことを考えた時もあった。

けれど、その度に陸玖さんや空良さん、海翔さん・・・

御堂家の人達の顔が浮かんで、踏み切ることが出来なかった。


帰りたい、あの場所に。

その想いだけが、今私をこの場所に留まらせている。



枕に顔を埋め、再び眠りにつこうとした時だった。

カチャッと扉の鍵が開いた音が響いた。


一瞬、食事を運んでくる女性かと思ったけれど

外は、もう闇に包まれていて夕食も随分前に運んできて

テーブルの上に、手を付けないままある。


ベッドから体を起こし、扉を凝視する。

ゆっくりとドアノブが回され、扉が開き一人の男性が入ってきた。



「誰?」


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