噂の三兄弟と遠い約束【Berry's Cafe限定】

その笑顔が怖いのなんの。

背中に少し冷や汗をかきながら、彼女をエスコートし

自分の車に乗せた。


「日本って久々だわ~。ねぇ、颯馬ちゃん。私行きたいところがあるの、寄ってもらえる?」

「えぇ。時間もありますし、いいですよ。」

「そ、良かった。」


真純さんは、笑顔でそういうと窓の方に顔を向ける。

嬉しそうに言っていた反面、窓に映る顔は切なそうな顔をしていた。 



しばらくして、真純さんの案内でついた場所は――――――――

清流寺。そこは、拓登の墓がある寺だった。


寺の住職に挨拶を済ませると、いつの間に手にしたのか

真純さんは菊の花束と線香、そして水桶を両手に抱え

拓登の墓の方に歩き出した。


「真純さん、持ちますよ。」

「ありがとう、颯馬ちゃん。」


彼女の手から、水桶を受け取ると

一言も話すことなく、砂利がひかれた道を歩いていく。


そして、一つの墓石を前に立ち止まると


「拓ちゃん・・・ただいま。」


そう静かに、両手を合し目を閉じた。


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