噂の三兄弟と遠い約束【Berry's Cafe限定】

瞬間、パーンッと乾いた音が部屋の中に響いた。

それは、颯馬が志乃の頬を平手で殴った音だった。


「あなたは、拓登の気持ちを少しも分かっていない。拓登は、どうして分かってくれないんだ。俺はただ心から愛する人と一緒に居たいだけなのに・・・ってそう言ってたんだ。真純さんは、何一つ悪い事などしていないのにっ!!」

「颯馬さん・・・お母様。拓登さんを、この家から遠ざけてしまったのは本当に申し訳なく思っています。」


言葉と共に深々と頭を下げる真純。

それを見て、志乃はフンッと鼻を鳴らし顔を逸らす。

けれど真純は強い意志を込めた瞳を真っ直ぐに向け話を始めた。


「拓登さんは、この家を出てからも気に掛けていました。もちろん私も彼の意見には賛成しました。彼の生まれ育った家を失くしたくは無かったから。だから私は、彼が亡くなった後もこの家を援助出来るように、何度も打診をしてきたはずです。」

「お前たちの力など、受ける義理は無い。」

「あなたのその頑固さが、今回のこの華月の危機に繋がったのだと、何故分からないのですか?こんな、犯罪紛いの事までして。」


颯馬は、頑なに自分たちの言葉を受け入れようとしない志乃に

腹だたしさを覚えていた。

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