噂の三兄弟と遠い約束【Berry's Cafe限定】

そして、そのまま立ち去るはずの真純の影は

まだ部屋の前に―――――――――


「・・・今、私のジュエリーと颯馬さんの奥様のブランド、MMブランドとコラボして〝着物に合うジュエリー″をコンセプトに企画を組んでいます。あなたさせ宜しければ、この華月堂を舞台にしたいと思っております。」


その申し出に、ピクッと志乃の肩が震える。

そして、ゆっくりと顔を上げ真純の影が映る障子を見上げる。


「真純さん・・・。」


初めて口にした、その名。

けれど真純はその声に答えることなく

「良いお返事をお待ちしております。」と言って障子の前から姿を消した。




廊下から見ていた颯馬は、一つため息をついて真純に声を掛ける。


「・・・甘いですね。」

「そうね。でも、この庭を見て颯馬ちゃん。あの一本桜をバックに撮影したら、素敵だと思わない?」


キラキラ瞳を輝かせ、月夜に照らされた庭を見つめる真純。

その目線の先にある一本桜は、とても大きく存在感があるものだった。


「確かに、そうですね。」

「昔、拓ちゃんが言っていたの。庭にある一本桜が一番好きなんだって」

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