神名くん
正直に、私が彼に恋心を持っていないと言うと嘘になります。なんせ私めも年頃ですし、女子です。更に彼はあの容姿にあの物腰です。長年殆ど一緒にいる時間が圧倒的に多いのですから。
気付いたら、彼には堕ちていました。これを恋心だと気付いたのはつい最近ですがこの感情自体を持ちはじめたのはきっとかなり前なのでしょう。気が付いたらそこにあったのです。
近くに、手を伸ばせば隣に転がっていたこの感情を私は否定するつもりはありません。ですが、口外するつもりもましてや、伝えるという行為をする気自体起こすつもりもないのですから、きっと彼は知らないままなのでしょう。
これは、彼に言ったら彼を困らせる為の行為ではないというのも己自身気付いています。何も謂わない。このままお隣り同士、たまたま懐いた娘のままというのは自分の自尊心を硬くガードしているだけなのですから。
もし、この口から謂ってしまった時に、もし奇跡で彼も私が好きならばそれはそれでよかったのかもしれませんが、その逆ならば。ずっと隣にいて、これからもずっと仲良くしたいのに、傷つきたくない私はきっと彼を避けてしまうでしょう。
それだけはどうしても己自身が拒んでしまうのです。傍にいたいからこそ出してしまった我が儘には私め自身が理解して行動をしなければならない。
伝えないと決めたのならば、私はきっと伝えないでしょう。それは、自分勝手な自分自身による契約なのです。それは、きっと私の足枷となり外れることはないのですから。