神名くん
彼がお隣りに引っ越したのは、私…、ああ、まだ自己紹介まだでしたね。私、山本仁乃―やまもとにの―と言います。よろしく。
と、まあ、彼が引っ越してきたのは、私が小学3年生の時期でした。私の家のお隣りは確かに大豪邸なんですが…、なにぶん古いので、お化け屋敷と称されてたんですよ。
まだ、小学生時代はお化け屋敷で遊んだりしていたんですね。ほら、そこらじゅうにいるじゃありませんか。やんちゃな男子と遊ぶ男勝りな女の子。私はその類にどんぴしゃりと当て嵌まったという訳ですよ。
そんな、お化け屋敷に引っ越し会社のトラックが止まったんですよ。好奇心が湧かない筈がない。何たって私は男勝りな少女でしたからね。
パタパタと自分の部屋がある2階から駆け出して、駆け降りてお化け屋敷まで行ったんです。すると、一人の男性―ここで既に齢20程の見た目―がふらふらとしたなんとも足元が覚束ない歩き方をしていました。
その男性は、小学生の幼い少女でも綺麗な顔の造りをしているのがわかりましたね。幼くまだ世間を知ったばかりの私は勘違いして
(お隣りさんにテレビどかに出てる人……、ええと、ええと、げーのーじん…だっけ、が引っ越ししてきた。)
とさえ勘違いするほどですから。今なら解る。私は一生懸命床に頭をすりつけて、全国の芸能界の方々に謝りたいくらいです。あの人は、顔がよくても芸能人と間違える人ではない。むしろ、間違えたらいけない気がするのです。
なんせ、生粋のただの"変人"なのだから。