神名くん

ファイルⅡ




「そういう事だったのですね。」

「……、」



私は、学校帰りなため制服に身を包み、神名くんの書斎で静かに呟いた。神名くんは、依然としてその人のファイルを眺めています。



私は、今朝学校に行って担任から知らされたのです。私たちのクラスを受け持っている国語担当の久水先生が昨日交通事故に合い重体。



目を覚ますのも確実に難しい状況だったのですが、今朝ゆっくりと息を引き取ったのだと。私はそれを聞いて納得してしまったのです。



彼が静かに帰りなさいと告げてくれたことにたいして。私は、学校が終わると何も変わらない面持ちで此処に来ていました。彼は、依然としてそこに座り、ファイルを眺めているところに私はお邪魔した。



私が口を開く迄には伺って数分は催しました。ずっと本棚にもたれ腕を組み、彼を見ずに俯いていたのです。思い口を開いた言葉が、先程の言葉となります。



神名くんは、そのファイルを丁寧に机に置くと、今にも泣き出しそうな表情で私を見つめ、



「ごめん。」



と呟いたのです。何故神名くんが謝らなければならないのでしょう。別に神名くんが悪い訳ではないのです。神名くんは、神様という職業でたまたま人間の運命を垣間見ることが出来るだけなのです。



別に神名くんが人間の運命を決めている訳ではないのです。ですから、神名くんは、何も悪くないのです。



なのに、どうして私はそんな神名くんに謂えないのでしょう。何故私は、神名くんに向いて涙を流しているのでしょう。



神名くんは、本当に何も悪くないのに。






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