神名くん
神名くんは、そんな私に気付いたのでしょう。ガタリと椅子から立ち上がる音が聞こえました。そして、ゆっくりとこちらに向かう足音も聞こえました。
そして、私は温かなそれに包まれたのです。神名くんの匂いが私を包み込むと溢れていた涙が更に拍車をかけて溢れていきます。
神名くんは、悪くないのです。
そう伝えたいのに、何も謂えない。喉につっかえて何も言葉を発することが出来ず、ですが気持ちは知ってほしいと思い、懸命に首を振るのです。
神名くんの香が、近しい人との別れが。私の涙を誘い出してしまうのです。気付いたら、神名くんの服にしがみついて幼子の様にわんわん泣いていました。
初めて彼と会った時の様に。あの時とは、身長も年齢も泣いている理由さえも違いますし、神名くんの私へ対する慰め方も全く違います。
ですが、神名くんは私を包み込み泣き止ませるよりは、更に泣いても良いと言う程に背中をトントンと叩くのです。
そんな神名くんは、私にとことん甘い気がします。そして、私はそんな神名くんだからこそこんなにも甘えてしまうのでしょうね。
神名くんは、神様ですが私は神名くんとして見てしまうのはこういうひとつひとつの私に対する優しさからなのでしょうとそう、思ってしまうのです。