神名くん



後悔先に立たずとは、これのことを言うのでしょうね。



私は、窓際の1番後ろという絶好の位置に自分の席はあるのです。確かに1番後ろの為か黒板は少々見えにくい位置なのですが、寝たり当てられない位置としては絶好の場所なのです。



そして、今、朝のホームルームなのですが、来年までの亡くなった久水先生の代わりの先生が紹介の為に教壇に立っているのですが、その方が少々問題なのです。



「今日から現国担当なりました、神名です。よろしく。」



自己紹介で既にクラスの女子の大半は目をハートにしていますよ。神名くんは、見た目は良いのできっと女子にも人気なのでしょうね。



私は神名くんの顔を見ないためにわざと外を眺めていました。久水先生が亡くなられたというのに新しい先生で皆さん既に心を入れ替えたようで…。



「先生!!いくつですか。」

「いくつだと思いますか。」

「先生!!下の名前なんですか。」

「何だと思いますか。」

「先生!!合コンみたいなノリですね。」

「ははは……」



このノリが続いていたのです。神名くんは、基本色々と伏せるのですが…、今回ばかりは少々違いました。



「では、下の名前だけは答えようかな。神名陵です。よろしく。」



目の前が真っ白になりました。今まで私には教えていなかったことなのに、皆さんには…いえ、会ってまだ数分の人たちには教えてしまうのですね。



ふいに目頭が熱くなるのを感じた私は涙を隠す様に、俯いたのでした。






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