神名くん
結局勝てない私は神名くんから目を背け拗ねる事しか出来ないのです。だけども之までにもこの様な事は幾度となく繰り返してきているので、神名くんは、要領を得ている気がしてなりません。
何時しか、神名くんは、完全に私をからかい倒すつもりなのでしょうか。いえ、よく考えたら既にその状況のようで致し方諦めを私は常備している様に思えてならないのです。
そう、考えて仕舞うと妙に己自身が滑稽に見えてならないのです。今までの、神名くんに対してのこの反抗心までもが、幼さを象徴するもので、私の心を燻るひとつとなり得たのでした。
すると、頑なに閉ざしていた私めの口の隙間から、「くくく…」、と口から漏れる笑いが自然と溢れたのです。それに、気付いた神名くんは、私を異形の様な目つきで見つめたのでした。
私はそれまでもが妙に面白く感じてなりませんでした。一度漏れた笑いは次第に早くなり、最後は盛大にお腹を抱えて笑い出していたのです。
神名くんは、更に私を精神異常者なのかと思い始めたのでしょう。彼の瞳からは少々侮蔑の意が込められているようでなりませんでした。そんな、神名くんの半身へと、私は体を預けたのです。
すると、神名くんは、私の頭を優しく撫でながら空を眺めていました。私は、笑うことに終止符を打つと、
「神名くん。」
と呟いていました。彼は勿論私の呟きに気付くと、こちらに顔を向けました。
「温かいですね。」
喉元まで出かけていた言葉を再び飲み込むと、有りもしない言葉をそっと紡いでいました。そんな、私の心情には気付いていないのでしょう、神名くんは、「そうだね。」と呟き返してくれました。