神名くん
「ってか、先生だなんて、神名くんも隅に置けないなぁ。」
「仕様がないだろ。君の高校の先生が魂でうろついているんだから。いいかげん回収しないとあれはそこまで保ちそうにない。それともなんだ、慎一が代わりにしてくれるのか。」
「え。勘弁。どうせ二十歳すぎたらそれを否応なくさせられるんだ。今のうちにエンジョイしていたいじゃん。」
「だったら安易にそんなこと言うな。イライラする。」
「はいはい。そんなことよりさあ。さっさとにのに真名あげればいいじゃん。見ていて可哀相過ぎ。」
「馬鹿な事を言うな。真名を与えるのは所謂求婚(プロポーズ)だ。そのうえ、僕の真名でにのを縛りつける。言霊は強力なんだ。彼女の名前を呼んだだけで彼女は僕の元に来る。そんな縛りつけの生活。高校生の彼女にはあまりにもキツすぎる。」
「そんなん、日常的に、にのの名前を呟いているってことだよな。」
「………、」
「うぇっ。マジかよ。お前も相当重症だな。キモッ。」
「まあ、気付いたら呟いている。」
「まあ、うん。ならアイツが相当身軽にならないと意味ないよな。うん。」
それから、慎一は自分を納得させるように頷いていた。確かに気持ち悪い部分が僕には相当あるから、時々「気持ち悪っ」と呟く声を無視する。じゃないと、殴る為に飛び掛かりそうだったから。
慎一をもう一度見てから小さく溜息をつく。そろそろ、戻らないと次の授業の準備がある。まあ、自己紹介で終わるとは思うのだが、形だけでも…、ね。
「僕行くから。」
まだ、唸っている慎一は、僕の声を聞くと、
「おうよ。」
と、生返事を返した。多分お前もさっさと戻れ的な言葉を投げ掛けても慎一は、聞かないなと思ったから、慎一は置いて行くことにした。