神名くん



それから、すぐにチャイムが鳴り、委員長が号令をかけたのです。そのまま挨拶をすませると私達は休み時間へと突入した。いつもすることのない私なので、本を懐から相変わらず取り出すとそれを読み始めました。読み始めたと同時に、



「やまもっちゃん。御呼び出しだよ。」



と、後ろの入り口側から声がしたので、顔をあげると慎一が手招きしていたので小首を傾げ本を伏せて私は席を立ったのです。慎一のもとにいくと、慎一はまず私に抱きついたのです。これは、彼の所謂習慣になっていると言っても過言ではないでしょう。私と会うたびに抱きつくのですから。



「ああ。にのやっぱり可愛い。」



そう言って過剰なまでのスキンシップは人目をひくので出来るだけ避けて頂きたいのだが、彼はそんなことを知らんと言わんばかりに私の頬に彼の頬をすりだした。と、その時だったバシリと鈍い音とともに慎一が離れた。



「公共の場では出来るだけ避けようか。慎一。」

「いいじゃん。神名くんだってしたいならすれば。」



そこから、妙に睨みあってる二人はこれが通常通りだなんて誰が信じようか。きっと無理だと思うので、私は苦笑いしか浮かべることしか出来なかったのです。何せここは高校の廊下で休み時間なのです。廊下にはうようよと生徒が出ています。ここで、慎一の様に「神名くん」発言をしたとたんどのようになるだなんて一目瞭然と分かるでしょう。



「いつも、従弟がお世話になってるね。」



少々困り顔で言う神名くんの演技が妙に面白くて、私めまでもがついつい頬を緩めてしまう始末なのでした。



「いえいえ。最近は慣れてきましたから。」



もう、小さいころからこのスキンシップをされてきたのである。慣れないはずがない。私のその発言に神名くんはどす黒いオーラとともに苦笑いを浮かべていたことは、きっと慎一は気づいていないのでしょう。







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