神名くん
彼の後ろを歩いていたのですが、彼はくすりと笑うと優しく手を握って、隣を歩くように促したのです。更に思ってもいない自体にうろたえるのは当たり前でしょう。恐る恐る彼の隣にきたのを覚えていますよ。
屋敷には不法侵入で何度もお邪魔をしたことありました。ですが、今回…、この時こんなにもこの屋敷は綺麗だったなんて、と目を疑うような勢いで固まってしまった。
屋敷…といっても洋館の造りをした屋敷は異国に来ているような面持ちをしていた。私は靴を脱ぐと磨きかかった廊下に足を乗せたのです。以前忍び込んだ時よりも綺麗な此処は、私にとっては好奇心を煽られるばかりでした。
そして、彼が私を招いて頂いたのは客間でした。真ん中に大きなテーブルにソファが威厳を持って佇んでいるではないですか。戦いてしまったのは致し方ないと思いませんか。一瞬だけ、身を引いてしまう始末ですよ。
そんな様子を頭上で面白そうにくすりと彼は笑ったのですから、致し方性格の悪い。まあ、性格の悪いことなどは更に彼と過ごして来ては何度も頷かされるのですから、私めはこの歳から勘の鋭い子だったのでしょうね。
勿論、自負しますとも。あまりにも間違えていないのですから。