神名くん
次に瞼を開けると、そこは私の中だったので正直に驚愕したのです。そして、私の目の前でそっと精神統一をしている先生がいたのです。きっと、外で先生は神名くんと話をしているのでしょう。私は、一人疎外された中でどうしたらいいのか分からずただじっと先生をみていたのです。
すると、瞼を閉じていた先生が突如口を開いたのです。それは、あまりにも突拍子の出だしで私は目を見開くことしかできませんでした。
「俺がまだ、ココにとどまっている理由なんだけどさ。」
見た目は女性なのですが口調が男性と言う、少し笑えるシチュエーションなのですが、内容が内容なので、どう反応したらいいのか分からず、「はぁ。」と、曖昧な返事を彼に送ったのですが、彼は、それで満足したのか話を続けたのです。
「俺さ、まだ30代でさ、全然人生を楽しみ切っていないわけなんだ。それに、俺国語の先生だから、人生ってなんだろうとか生きる意味ってなんだろうとか全然理解していないわけよ。」
「それは、確かに。痛いですが、まっとうな考えですね。」
「だろ。だから、それを見つけてから成仏してもいいんじゃないかなって思ったんだ。だからココにとどまってしまったってわけ。彼から逃げてね。」
そう言って、先生は瞼を閉じていたのを開けた。きっと、今頃私の体は項垂れて瞼を閉じているのだろう。それでも、状況を知っている神名くんはどういうことなのかしっているのでしょう。それを知っていて何も言ってこないのですから彼は流石なのだと思うのです。確かに、私の体に話しかけても私の中までは彼の声は聞こえてこないのです。意味がないと言ったら意味がないのですが。
それでも、私は彼に向き合うために本体の体を目ざめさせるのではなく先生と向き合うことを決めたのですからこれもこれで薄情なのでしょう。