神名くん

ファイルⅤ



先生の遺影を前にしてつい涙ぐみそうになったので私はぐっと奥歯に力を入れたのです。大きな祭壇の下には先生の奇麗にされた遺体がそこにただ眠っているかのようにたたずんでいるのです。その横には正装の神名くんが立っているのですが、公衆の面前で私に触れることは出来ない様で、ただ悲しそうな目で私をみるのです。



あのあと、私は元の通りに戻ったのです。気が付いたら神名くんに膝枕をされており、彼の顔を全面アップされたのは流石の私めも驚いたということです。ですが、彼の手元にあった淡い光を放つあれを封している小瓶が手元にあった。それを見たとき、どこか胸がきゅっと痛くなったのはきっと、こうなる前の先生を知っている私がいて、こうなった後に先生と接してしまったためかもしれなかった。



神名くんは私の手を優しく持ち上げると、私にその小瓶を乗せてくれたのです。その小瓶はどこか温かく私の涙を誘うのをいともたやすくこなしてしまったのです。神名くんは、私を優しく包み込んでくれるので更に涙があふれ止まらず顔がぐしゃぐしゃになってしまった。それでも、包み込んでくれる神名くんの手が温もりがこの小瓶の温かさが、重さがあまりにも優しくて、重くて私にはどうすることも出来なかったのです。





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