神名くん



伊香花祭は、地元の神社で毎年行われている。当時の私にとって、とても大きな鳥居はとても怖かった様に思えます。そっと、神名くんの手を握る強さを大きくしてしまったのです。すると、神名くんはおかしそうにくすりとひとつ笑むと私の手も強く握りかえしたのです。




どうしてか、それだけでとても心が落ち着いたのを覚えています。そして、その温かな手に安心ほも覚えたのです。私は、下を向いてただ階段を登ったのです。



そして、階段を登りきると目の前は、キラキラと輝く屋台が群れをなしていました。子どもの私は目を目一杯輝かせたのです。色取り取りの提灯に賑わう路中は明るく見えたのでしょう、気が付いたら私は神名くんよりも速い歩調で前を歩いていました。



そして、更に気がついた時には神名くんは私の手から離れていたのです。不安で、不安で周りをいったん見回したのですが私の知っている人は誰もいなかったのです。すると、不安な足取りをいったん止めてじっとしていることにした時でした。



「どうした。」



頭上から、澄んだ柔い声が聞こえたのです。そっと見上げると、藍色の浴衣を着たとても綺麗な女性がりんご飴を囓りながら、私を見下ろしていました。その女性は、本当に人形ではないかと言うほどに全てのパーツで完璧だったのです。結っている髪の毛もまた、色っぽく品がでていたのを覚えています。



ですが、私からしたらどこか妖怪の様にも見えたのです。綺麗な妖怪の女性。なので、少々身構えてしまう。何も声を発する事も出来ずにただ、俯いていました。その時だった。





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