神名くん
「月乃。どうした。」
その女性の名前を呼んで男の人が女性の背後から現れたのです。いかにも頭の良さそうな男性でした。しかし、私からしたら更に知らない人が現れてしまったので更に委縮してしまう。
「嗚呼。誠。なんか、迷子みたい。」
「お前、まさかそんな無表情で子ども相手にしてないよな。」
「これは、デフォルトだから仕方ない。そして、それとこれは関係ない。」
女性が妖怪のはずはないのだがそう思ってしまうのはこの無表情からだと、委縮していながらも思ってしまっている時点で落ち着いている自分がいるのに気がついた。
誠と、呼ばれた男性と月乃と呼ばれた女性たちは何やら話し込んでいる様子を置いてけぼりの私はそっと眺めていたのです。
しかし、次の瞬間ふわりとからだが持ち上がったのです。後ろから抱き上げる形でした。私は驚いて抱き上げている人を見ました。
狐のお面をつけた男の人。しかし、これが神名くんだと言う事は直ぐに分かりました。見つけてくれた安心感は半端なくて、つい神名くんの頭をぎゅっと抱きしめてしまったのです。
「この子は僕のなので。」
神名くんがそう言うといつの間にかこちらに注目していた2人はたじっと私たちを見ていたのです。私めは、その2人の様子をただ横目にしていたのです。何せ、見知らぬ人達を相手に未だに警戒心を抱いていたためでしょう。
しかし、そんな私に対しても彼女たちは何も言いませんでした。そっと、私たちを見つめた後、月乃と呼ばれた女性は面妖の様な顔を口許に笑みを作ることでゆっくりと崩したのでした。