神名くん




数秒の間。私めは、その驚愕で言葉を発することが出来ませんでした。ただ、少しだけ長い前髪と整った彼の顔をじっと見つめることしかできなかったのですが、彼が少しだけ焦った様子を見ると何か口から言葉を出さなくてはと思ったのです。



「は、はい。なんでしょうか。」


すると、彼は少しだけボッと口許を緩めたのです。



「あ。いや。その、対したことないんだけどさ。山本さん。伊花香祭行く人とかいる?いなかったら一緒にどう…かな。」



少しだけ照れた頬を隠すようにしてか口許を手で覆う。私はそんな、クラスメイトの顔をじっとみた後に、少しだけ悩んでしまった。伊花香祭…。最後に言ったのは神名くんと行った時以来なのですから凄く懐かしい。



私は賑やかな祭りで、あそこで迷子に合い…そして…。その思い出しか出てこないものですから、お祭りのイメージがあまりないのです。ここでひとつ。作ってもいいような気もしたのです。



そして、ゆっくりと首を縦に振ったのでした。




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