神名くん
そして、静かに時も過ぎるのです。神名くんの喋り方はとても静かで丁寧なので、時が過ぎるのがとても静かに感じるのです。
「にのは、何か本を読むのかな。」
その質問は突如でした。私はゆっくりと首を横に振ります。何せ、女子らしく静かに…、というのが何よりも苦手なのですから。本など読んだ試しが無いのですから。
すると、神名くんは驚きながら、「君は本を読むといいよ。」そう、笑ったのです。性格が悪い。私は確かにそう思ってしまいました。彼は、私の横で腰をあげると、つい孤独感が堪らなく襲ってきたのです。
つい、本当についでした。神名くんの服の裾を掴んでいました。すると、神名くんは驚いた表情を見せました。だけれども、直ぐに口許を緩めると私を抱き上げました。
「……っ」
私は息を呑みました。最初もそうですが、私は正直にそこまで身長が低くない気もしていたのですから何遍も何遍も抱き上げられると凄く、恥ずかしいものなのです。
そんなことを知らないのですから、神名くんは笑いながら歩き出したのです。この人は、一体何が楽しいのでしょうか。正直に聞きたくなりましたね。