【短編】そばにいるよ。
 
単なる腐れ縁、単なる幼なじみ。

それ以外は、ない。





「ほんっとガキよ、ナオはっ!」


晩ご飯を食べ終わり、お風呂や着替え、明日の授業の準備を済ませてベッドに横になる。

けれど、なかなか寝付けず、口をついて出るのは、ナオへの文句ばかりだった。


試作のケーキを全部食べてもらえたことは素直に感謝したいと思うのだけれど、それ以外は、ナオはけっこう自分勝手で、フラれたらすぐに魔法の言葉をねだりに来たり、いきなりスエットを脱ぎだしたりと、やりたい放題だ。

あたしが困っているときは、それらしいことを適当に言って「バカナ」終わりにするくせに、これじゃあ、アンフェアじゃないか。

愛情ってなんだ、愛情って。


ああ、もう、幼なじみなんて厄介なだけだ。

あたしがいなくなったら、一体、誰に何て言ってもらって慰めてもらうのだ、ナオは。

無駄に顔がよく、女の子によくモテて、しかも恋多き男、ナオという幼なじみを持つと、それだけでよく思わない子もいるのに、そのあたりの諸事情を一向に分かってもらえないのが、やけに悔しいあたしなのだった。


……なんて文句ばかりを並べていても、実際、頼られたら断りきれないのだけれど。
 
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