【短編】そばにいるよ。
 
「ごめんね、莉乃、穂乃花。分かった、あたしに任せて。ナオ、ちょっと表へ出よう」


ナオのバカさ加減にほとほと呆れ、けれど、このまま野放しにしておくわけには到底いかず、ナオにそう言うと、一緒に家庭科室を出る。

バツが悪そうな顔をしてついてくるナオは、それでも、廊下に出るとこう言う。


「大事なケーキなんだよ。そのケーキをカナに作ってもらおうとして何が悪いのさ。彼女に言っちゃったんだよ、カナが作ってくれるって」

「……、……。……それ、莉乃と穂乃花には?」

「ん? 言ったよ。そしたら、急に目の色を変えてダメって。ケチだよなー、まったく」

「……、……」


はあ。

そりゃ、2人が怒るのも無理はない。


「あのね、ナオ。彼女の気持ちになって、バカな頭でよーく考えてみてごらんよ。もしかしたら、ケーキを手作りしようとしていたのかもしれない、ナオの口からあたしの名前を聞くのが嫌かもしれない、って考えられない?」

「え、なんで俺の口からカナの名前を聞くのが嫌なんだよ、ただの幼なじみじゃん。ケーキだって、うまいのを用意するツテがある、って言ったら、すげー喜んでくれたよ」

「……バカすぎる」

「なんだよ、さっきからバカバカって。はっきり言ってくんないと、分かんねーし」
 
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