【短編】そばにいるよ。
 
ほんっと、嫌だ、こんな男……。

ナオに告白をする女の子が絶えないことは、いまだによく分からないままなのだけれど、ナオがすぐに「なんか合わない」と彼女にフラれてしまう理由は、これではっきりした。

女の子の乙女な気持ちのほんの少しでも、ナオには理解できる能力がない、ということだ。


莉乃と穂乃花は、おそらく、ナオの「カナが作ってくれる」という言葉が新カノさんを傷つけてしまったと考え、ナオが言ってしまったことは取り消せないにしても、急に「ダメ」と断りだしたのではないだろうか、と思う。

あたしが2人の立場でも断るに決まっている。

それでも諦めないようなら、ナオが言うところの、部員みんなの愛情がこもったケーキを持たせて、彼女のもとへ向かわせるだろう。


「ちょ、カナ。黙ってないで、なんか言えよ」


こめかみを指で押さえ、ふるふると頭を振っていると、何も言わないあたしに不安になったのか、ナオは少し、弱気に言った。

それでも、まだあたしが言ったことを理解できていないらしいナオには、焦る様子はない。

普通ならここは、自分の失態に気づき、彼女に謝りに行く場面だというのに、一から十まで説明してやらないと分からないってか。

こんの、バカちんが……っ!
 
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