【短編】そばにいるよ。
「そっかー、じゃあ、俺にはカナが合ってるかもしれないな。面倒くさくないもん、カナ」
「……は?」
けれど、鼻息を荒くしているあたしとは対照的に、ナオはのんびりとした口調でそう言い、意表を突かれたあたしは、は? と言ったときの表情のまま、しばし固まってしまった。
何を言い出すんだ、こいつは……。
お互いに裸を見せ合っても、なーんもない、と言ったのは、つい1週間前じゃないの。
いやいや、ここはやはり、彼女に謝りに行くべ き、クライマックスの一番重要な場面だ。
そうすぐに気を取り直し、ナオを回れ右させると、その背中を押しながら、あたしは言う。
「冗談やめてよ。面倒くさいとか、面倒くさくないとか、ナオの恋愛の基準はそこなの!? ナオがよくても、あたしが面倒くさいわ。ほら、バカなことばっかり言ってないで、さっさと彼女にフォロー入れてきてあげなさいよ」
もしも今までの流れが完全にあたしの早とちりだったとしても、ナオが「やっぱりクリスマスケーキはお前に作ってほしい」なんて言えば、新カノさんは嬉しくないはずはない。
ナオに対する不安や不満も、……あれば、なのだけれど、甘ーいケーキに包まれて、見事にハッピーエンドになるはずである。