【短編】そばにいるよ。
ナオの頼みはあっさり断れても、女の子の頼みはなかなか断りにくいものなのだ。
それで2人とも、どうしたものか……と、困った顔をしていたのだけれど、そう提案をしてみると、快く承諾してくれ、心がふっと軽くなる。
ボールみたいなおにぎりでも大丈夫、あたしたちが立派なケーキを作れるようにしてみせる!
*
というわけで、放課後の家庭科室には、ナオの彼女、江崎璃子ちゃんの姿があった。
ちなみに、友だちからは“グリコちゃん”と呼ばれているそうで、本人もすごく気に入っているあだ名らしく、そう呼んでほしいとのことだ。
「じゃあ、まず、一通り作ってみよう。準備はいい? グリコちゃん」
「うん。よろしくお願いします!」
そうして、莉乃や穂乃花、ほかの部員たちが、それぞれに微妙に材料の配分を変えながら作りはじめる中、グリコちゃんとあたしも、さっそく生クリームケーキ作りに取りかかった。
スポンジケーキのしっとり感と、生クリームの甘さの加減がやはり難しく、イブの販売までにはまだ多少の時間があるとはいえ、何人かのグループに分かれて試作をするだけでは個数が足りないため、個々に試作をし、試食をしまくろう、と決めたのは、つい先日のことだ。