【短編】そばにいるよ。
「ホイップはね、こう、ボウルの底からすくい上げるようにして立てるといいんだ」
「……こう?」
「うん。いい手つきじゃん!」
「えへへー」
風味や口当たり、分量やタイミングのことは、とりあえず後回しにしておいて、まずは基本であるホイップの立て方を教えていく。
自分でホイップが立てられるようになれば、あとは自分好みのクリームを探求していけばいい話で、グリコちゃんの場合は、よりナオの好みを追究したホイップを立てればオッケーだ。
ナオは、愛情が足りない、なんてわけの分からないことをごちゃごちゃと言っていたけれど、グリコちゃんが作れば、ナオが言うところの愛情だって、たっぷり入ることになる。
スポンジケーキが焼き上がれば、あとは、いちごやキウイ、ドライフルーツなどを挟んで成型していき、飾り付けをすれば出来上がりだ。
ケーキ屋さんのように、ホイップを綺麗に絞ったり、スポンジに塗れなかったりしても、今の自分にできる最高の飾り付けができたなら、それだけでケーキは完成となる。
「うー、うまく絞れない……」
「いいのいいの。スライスのアーモンドとかを貼り付けたら、カバーできるできる!」
「あ、そっかー」