【短編】そばにいるよ。
とにもかくにも、これでケーキは完成だ。
ケーキ作りの特訓をしていることはナオには内緒にしておきたい、ということで、作ったケーキは持ち帰り、家族で食べるというグリコちゃんは、莉乃に箱詰めをしてもらうと、それを大事そうに抱えて家庭科室をあとにしていく。
「ほんっと、ありがとうね!」
「ううん、じゃあ、またねー!」
「また明日ねー!」
にこにこと顔をほころばせて帰っていくグリコちゃんに手を振りながら、ナオもきっと喜んで食べてくれるよ、と思うあたしだった。
「ちょっと、カナ。いいわけ?」
すると、ああもう、グリコちゃん可愛いなぁ……と思っていると、莉乃が何やら不穏な声色でそう言ってきて、あたしは、何のことだか分からず「んー?」とのん気に聞き返した。
一体、何が「いいわけ?」なのだろう。
と。
「……うーん、なんていうのかな、すごく言いにくいんだけど、たぶんナオ君、グリコちゃんには、もう気持ちがないんじゃないかと思う」
「は!? どういうこと!?」
「なんか違う、って言ってるの、聞いちゃったんだよね。だから、あんなにグリコちゃんを焚きつけて大丈夫かな、って思って……」
「……」