【短編】そばにいるよ。
 



けれど、それからしばらくした、ある日の放課後、いつものように家庭科室でグリコちゃんを待っていると、真っ赤に泣きはらした目をした彼女が現れ、あたしの顔を見るなり言った。


「ケーキ、いらなくなっちゃった……」


今にも泣き崩れそうなグリコちゃんの背中を支えながら、とりあえず近くの空き教室に連れていき、落ち着くのを待って話を聞いてみる。

すると、この間、莉乃が「早とちりだった」と言っていたことが現実になったようで、クリスマスは大事な予定があるから会えなくなった、と言われた、とのことだった。


「そんな……。でも、はっきりと、別れよう、って言われたわけじゃないんだよね……?」

「うん、そうだけど……。でも、クリスマスに大事な予定、って、フラれたのと一緒だよね。イブも25日も空けておく、って言ってくれていたのに、今日になって急にだもん。好きな子がいる、ってことだと思う。椎橋君には」

「なんて最低な。ほんっとにごめん、グリコちゃん、ナオにはあたしから……」

「ううん、いい。椎橋君とつき合ってみて、カナちゃんと一緒にケーキを作ってみて、ああ、やっぱりなぁ、って思ったんだ、あたし。椎橋君、カナちゃんのことが好きなのよ、きっと」
 
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