【短編】そばにいるよ。
あたしの言葉を遮ったグリコちゃんは、机の上に置いていた手をぎゅっと握りしめ、言う。
今まですごく辛そうな顔をしていたのが、そう言ったことによって、いくぶん、すっきりした顔に見えるのは、あたしの気のせいだろうか。
いや、違う。
「本当のところを言うと、あたし、ずっと不安だったんだ。椎橋君、一緒にいてもカナちゃんの話ばっかりするから、本当にあたしのことが好きなのかな、って。だから、フラれてすっきりしたかも。……ううん、さっぱりした!」
そう言い切ったグリコちゃんは、意地を張っているのでも、強がっているのでもなく、心からすっきり、さっぱりとした顔をしている。
けれど、問題はあたしだ。
どういう顔をしたらいいのか、さっぱり分からず、友だちのグリコちゃんと幼なじみのナオとの間に挟まれ、心境は複雑極まりない。
「ぷっ。なんて顔をしてるの、カナちゃん」
「……いや、だって、ナオがあたしのことが好きだなんて嘘だってば。顔を合わせれば言い合いばっかだし、無理難題を押し通そうとしてくるし、裸を見せ合ってもなーんもない、って言ったんだよ? 普通に考えて、ないよね」
「そうかなぁ。ふふっ」
「そうよ!」