【短編】そばにいるよ。
 
「もし万が一、ナオが来たら、居留守を使えばいいしね。帰ったらお母さんに言おうっと」


そうして、コートのフードをかぶり、手にはクリスマスケーキを携え、あたしは帰宅を急ぐ。

ちなみにケーキは、しっくりくるバランスをやっとのことで見つけ、自分の家用に持って帰っているこのケーキも生クリームケーキだ。

グリコちゃんは、試作でケーキを食べ飽きてしまったとかで、今夜はお寿司でクリスマスを祝うらしく、また、友だち関係も良好である。


幼なじみと元カノが友だちって、ナオの心境的にはどうなんだろう……とは、案じてあげないことにあたしは決めている。

別にどうとも思っていないのがオチだろうし、もしも、少なからず思うところがあったとしても、自業自得、で片付けてやろうと思う。


要するにあたしは、グリコちゃんが言ったことがいまだに気になっていて、ナオに対して、どこまで行ってもあたしたちは幼なじみだ、という境界線を張ろうとしているのだ。

それは、時間を潰そうと思っていた公園を通り過ぎ、家に着くまで延々と続いたのだった。


けれど、家に着き、玄関を開けたとたんに目に入ったのは、見慣れたスニーカー。

……ナオだ。
 
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