【短編】そばにいるよ。
「おい、カナ。ちょっとベッド貸せや」
「……は?」
しかも、唐突に横暴な要求をしてくるから、横になって休むのだろうとは思うけれど、なかなかどうして、マヌケな声が出てしまう。
両親も呆れているのはさることながら、そこまでして今日中に食べなきゃならないものでもないでしょうに……と言ってやりたいくらいで、しかしながら、同時に、大事な予定とやらはどうした、とも言ってやりたい気持ちだ。
クリスマスに大事な予定がある、と言われたならば、だいたいの人が、恋人と会うのだろう、と思うと思うし、会うのは夜だ、と相場が決まっているのではないだろうか。
それなのにナオは、あたしの部屋のベッドを無理やり借りようとしていて、帰る気配はなく、少し休んで残りのケーキを食べるつもりだ。
「返事がないな。ただの屍のようだ。ということで、ベッド借りるから、先に行ってるわ。カナも来るなら、ついでにケーキも持ってきて」
「あ!待っ……!」
「んじゃーなー」
「ちょっ、ナオっ!!」
これ以上呆れることはないと思っていたのに、さらに呆れたあたしは、そそくさと階段を上がっていくナオを止めそびれてしまった。
まったく……。
どうなっているのだ、ナオは。
これだから、幼なじみは厄介なだけなのだ。