【短編】そばにいるよ。
 
「夕方からずっと待っていたのに、ちっとも帰ってこないから、やっとカナが帰って嬉しいのよ、直貴君。ケーキ、持っていってあげて」

「むー……」


母に、ふふっと笑いながらそう言われ、さっきはケーキを待っていたって言ったじゃん、と心の中で文句を言いながら、それでも、渋々とケーキを持って2階に上がる。

今思い出したのだけれど、そういえば、明日はコロンの世話係の日で、朝早くから学校に行かなければならない日だったのだ。

こうなったら、ナオには早くケーキを食べて帰ってもらい、明日のために寝るに限る。


「ナオ。あたし、明日はコロンの世話係なんだよね。早く寝たいから、早く食べて」

「お、25日なのにご苦労なことだな」

「……あのね、豚にはクリスマスもお正月も関係ないの。いいからほら、早く食べてよ」


部屋に入ると、ナオはご丁寧にもストーブをつけ、布団を鼻の下までかぶり、見事に横子になっていて、あわよくば寝る勢いだった。

それでは困るため、布団を勢いよくはがし、巨大なダンゴムシのように体を丸めるナオに向かって、むん!とケーキを突き出す。

あたしの部屋を自分の部屋みたいに使わないでよね、曲がりなりにも男女だというのに。
 
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